Jさん(20代 男性/腫瘍性骨軟化症)

FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症と診断された患者さんの体験談です。実際の症状や経過には個人差があります。
気になる症状がある方は医師にご相談ください。また必ずしも同じ症状がFGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症と診断されるとは限りません。

Jさん(20代 男性/腫瘍性骨軟化症)

Jさん(20代 男性/腫瘍性骨軟化症)

職業:離職中(前職は介護職)
現在同居の家族:妻、子ども1人(娘1人)

20代後半で発症
「これからについては漠然とした不安があります」

診断と治療の流れ

20代後半、足が痛くなり接骨院へ

接骨院に通うものの、全く良くならず

最初の症状は足がなんとなく痛む程度で、それから徐々に足の色々な部分に痛みが出てくるようになりました。当時は筋肉痛だと思っていたので接骨院に通っていましたが、施術をしてもらった時は一時的に痛みが良くなるものの、結局、また痛みだしての繰り返しで、全く改善しませんでした。家族に相談したり、調べたりするも、痛みの原因がよく分からないまま、徐々に痛みがひどくなっていき…。接骨院に通いだしてから1年くらい経つと、首や肩甲骨、腰のあたりも痛くなりました。痛くて娘を抱っこできなくなったり、走れなくなり歩き出すのにも時間がかかるようになり、休み休み無理やり歩くようになったり、階段は一段ずつしか降りられなかったりと、普通の生活をするのも大変になったため、市内で一番大きい総合病院を受診しました。

point

  • 足の色々な部分が筋肉痛のように痛くなり、接骨院に通う。
  • 接骨院に通うようになって1年くらい経った頃から、首や肩甲骨、腰のあたりも痛くなり、普通の生活を送るのも大変に。

発症より約1年後、首も痛くなり総合病院へ

色々と検査をするも原因が分からず、痛み止めも効かず

総合病院の総合内科で診てもらったのですが、色々な検査をするものの、全く原因が分からなくて…。最初に、骨ではなさそうだとなり、心理的な可能性や、無呼吸症候群が疑われたりしたので、その検査も受けました。痛み止めの薬も出してもらったのですが、あまり効果はありませんでした。咳やくしゃみをすると、あばらに響き、腰から崩れるぐらい痛かったため、咳やくしゃみをしないよう無理やり抑えたりもしましたね。

受診し始めて1~2か月くらい経った時に、総合内科の担当の先生が変わり、その先生がレントゲン画像で骨にひびが入っていることを見つけました。そこで、「ひょっとしたら骨に異常がある可能性があるから、次の受診時に整形外科の先生に診てもらおう」ということになりました。

point

  • 総合病院の総合内科を受診して、色々と検査をするものの、原因が分からず。
  • レントゲン画像で骨に微妙にひびが入っていたため、整形外科を受診することに。

発症より約1年2か月後、大腿骨骨折で緊急入院へ

整形外科を受診したら、そのまま入院し手術に

総合病院を受診して2か月目で、初めて整形外科の先生に診てもらったのですが、大腿骨にひびが入っているということで、そのまま緊急入院となりました。入院4日目に大腿骨の手術をして、術後のレントゲン検査で反対側にもひびが入っていることが判明したため、入院から6日目(最初の手術から2日目)に反対側の手術もしました。20代で両側の大腿骨にひびが入ることは稀であり、骨軟化症が疑われました。そこで、入院中に線維芽細胞増殖因子23(FGF23)も測定したところ、基準値を超えていることが分かり、退院後にその総合病院の糖尿病内科*を受診することになりました。整形外科の先生は過去に骨軟化症の患者さんを診たことがあったようで、その時の経験から私の症状も骨軟化症によるものではないかと疑ってくれたようです。

手術から1か月程度経ち、リハビリテーションによって松葉杖をついて歩けるようになったところで退院し、新たに糖尿病内科で色々な検査を実施しました。その結果、「腫瘍性骨軟化症」と診断されたのですが、難病であるため専門の先生に診てもらうのがよいとなり、大学病院を紹介してもらうことになりました。妻が専門の先生についてインターネットで調べてくれて、この病気を研究されている先生がいる大学病院が車で1時間半くらいのところにあることが分かり、総合病院の糖尿病内科*の先生に、その大学病院を紹介してもらいました。

*「くる病・骨軟化症」を診療する科を内分泌代謝内科などと標榜している施設もあります。

point

  • 整形外科を受診したら、大腿骨にひびが入っていることが分かり、そのまま入院し手術に。
  • 術後、反対側の大腿骨にもひびが入っていることが判明。20代で両側の大腿骨にひびが入ることは稀なため「骨軟化症」が疑われる。
  • 血液中のFGF23が高値だったため、同じ総合病院の糖尿病内科へ転科、「腫瘍性骨軟化症」と診断される。

発症より約1年4か月後、専門の先生のもとに転院

大学病院で腫瘍の位置が分かるものの、切除は断念

大学病院の糖尿病内科を受診し、また色々な検査をしました。検査費用がかさみ、医療費助成制度を利用するものの、金銭的な負担が大きくて大変でした。前の総合病院で「腫瘍性骨軟化症」の診断がついた時点で指定難病の申請を出したので、費用負担は少なくなるということだったのですが、認定をもらうまでは窓口で、一旦、自分で支払う必要があったので…。

総合病院で入院中にFGF23の結果が出たあたりから、血液中のリンの量を増やす薬を飲み始めていたのですが、大学病院に転院してから量が増え、痛みは改善したような気がしました。大学病院では、「骨シンチグラフィー」「FDG-PET/CT」「ソマトスタチン受容体シンチグラフィー」と、3つの大きな検査を1か月ごとに1つずつ受け、並行して色々な検査を受けましたが、結局、腫瘍の位置は見つけられませんでした。そこで、全身22カ所から血液を調べて腫瘍の位置を特定する全身静脈サンプリング検査をすることにしました。この検査ができる医療機関が遠く、飛行機で行くような地域の大学病院だったのですが、まだ20代で、これからの人生を考えると、腫瘍の位置を特定して取り除くことができるならやりたいと思い、検査を受けました。

全身静脈サンプリング検査から1か月後、主治医の診察で腫瘍は股関節辺りにあることを教えてもらいました。残念なことに、大腿骨の手術で入れたボルトの先の方にあったらしく、腫瘍が転移してしまっている可能性があるとのことでした。もし、転移していたら、手術で股関節にある腫瘍を取り除いて人工関節に変えても完治するのは難しいかもしれないとのことです。メリットとデメリットを考えて、手術をせず既存の機能を残すことに…。そこで、主治医の提案で今まで飲んでいた薬と違う仕組みの薬に変更し、治療を続けることにしました。

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point

  • 医療費助成制度を利用するものの、指定難病の認定をもらうまでは、金銭的な負担が大きくて大変だった*。
    *指定難病の医療費助成を受けるための申請から医療受給者証が交付されるまで約3か月かかりますが、認定されればその間の発生した医療費は払い戻し請求することができます。
  • 全身静脈サンプリング検査をした結果、腫瘍の位置が特定されたものの、腫瘍を取り除くのは断念し、薬物治療を継続。

これからのこと

20代後半で発症してしまい
これからのことは漠然とした不安があります

これからのことを考えると、不安が大きいですね。20代後半なので、まだまだ働いていかないといけない年齢ですが、平日に通院しなければいけないのは負担が大きくて…。病気を発症してから一番困ったことは、経済的なことです。入院してから3か月程度は休職できたのですが、その後、離職しなければならなくなってしまいました。家族もいますし、そこが一番困っています。薬による治療もいつまで続けていくのか見通しも立っていません。先が分からないのが一番不安を感じます。

この病気は、不摂生が原因で起きるものではなかったので、なんで自分が発症したのかと思いますし、仕事も辞めざるを得なくなると、非常に精神的にもダメージが大きくて…。周囲には助けられてばかりで、もうこれ以上、頼れない気持ちでいっぱいです。現在の主治医も非常に良い先生で、いつも診察時間を最終の枠にしていただき、時間を気にせず相談にのってもらえています。

同じような症状の患者さんに自分が何か伝えることは難しいのですが、同じFGF23が原因の病気には、自分のような腫瘍性のもののほかに遺伝性のものがあると聞いています。適切な治療を受けられるように、まずどちらなのか確認していただければと思います。

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この記事の監修ドクター

今西 康雄先生

今西 康雄先生

  • 大阪公立大学大学院医学研究科
  • 代謝内分泌病態内科学 准教授

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