Lさん(40代 女性/X染色体連鎖性低リン血症性くる病・骨軟化症)

FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症と診断された患者さんの体験談です。実際の症状や経過には個人差があります。
気になる症状がある方は医師にご相談ください。また必ずしも同じ症状がFGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症と診断されるとは限りません。

Lさん(40代 女性/X染色体連鎖性低リン血症性くる病・骨軟化症)

Lさん(40代 女性/X染色体連鎖性低リン血症性くる病・骨軟化症)

職業:会社員(事務作業と立ち作業は半々)
現在同居の家族:夫、子ども2人(息子2人)

フルタイムで働く2児の母
「希望をもって治療を続けていければ」

診断と治療の流れ

1歳の頃、O脚で受診し治療開始

運動全般が苦手なものの、自覚症状はなく

1歳の頃、親がO脚を気にして近所の小児科に診てもらったのが始まりです。その小児科では「よくあることなので、治りますよ」と言われましたが、もし気になるようなら大きい病院で診てもらうのもよいのではないかと勧められたため、総合病院も受診したそうです。

総合病院を受診したら、そのまま「くる病」の診断がついたそうで、物心がつく頃には服薬しながら、その病院の整形外科に定期的に通院していました。当時は自覚症状が全くなくて、運動全般が苦手なくらいの意識だったのですが、ある日幼なじみの友達に「運動音痴なのは病気だからだよ」と指摘されて、ショックを受けたのを覚えています。その時まで、病気と運動が苦手なことが結びついていなくて…。それ以外にも、どうしても足が内股になってしまうので、小学生の頃はクラスメートにからかわれたり、心配だったからだと思うんですけど、親に指摘されて直されたりするのが、本当に嫌でしたね。

薬は、1日3回くらい毎日飲んでいて、修学旅行の時などは、人前で飲むのが嫌だったので、こっそりと隠れて飲んでいました。

point

  • 1歳の頃、O脚のため近所の小児科を受診。その後、総合病院を受診し「くる病」の診断を受ける。
  • 物心がつく前から、服薬しながら、総合病院整形外科へ定期的に通院をする。
  • 運動全般が苦手ではあるものの、自覚症状はあまりなく過ごす。

中学3年生の頃、右足のO脚の矯正手術

高校受験を控え、入院し手術をすることに

整形外科へは定期的に通院していて、受診した際に受ける検査の内容や治療は、ずっと同じだったと記憶しています。

ちょうど中学3年生の時に、O脚を矯正するため、右足の手術をすることになり、3か月ほど入院しました。夏休みに合わせて手術を行ったのですが、新学期が始まってもしばらく入院していましたね。私はあまり手術に乗り気ではなかったのですが、両親と先生が強く勧めてきたので、受けることにしました。

当時は高校受験のために塾も通っていましたが、中断せざるを得なくなり、受験に対する気持ちの維持が少し難しくなってしまったため、志望校を変更することになりました。しかし、両親は献身的にサポートをしてくれましたし、長期間入院したことだけが原因とは思っていません。また、入院中に同級生とは違った年齢の人々と交流し、すごく貴重な体験ができたと思っています。

point

  • 中学3年生の夏に、右足の手術をするため、2か月ほど入院する。
  • 高校受験は大変だったものの、入院期間中に様々な人と交流し、貴重な体験ができた。

大学生の頃、治療を中断

治療を中断、その後、歯のトラブルに悩まされるように

手術後も定期的に同じ病院に通院していたのですが、大学への進学を機に一人暮らしを始めたため、通院するのが難しくなってしまいました。また、通っていた病院もなくなってしまい、治療を中断することになりました。長時間、歩いたり走ったりした時には、膝に痛みを感じることはあったのですが、普段の生活に影響があるような自覚症状もなかったので、治療をしていなくても特に不安はありませんでした。

しかし、治療を中断して、しばらくすると、歯のトラブルに悩まされるようになりました。しっかり歯磨きをしても痛くなり、歯科医院を受診しても、むし歯が見つからず、歯周病と診断されたり、膿ができたり…。電動歯ブラシに変えてみたり、頻繁に歯磨きをしたりすると、今度は「歯磨きをしすぎ」と言われたり…。

20代後半の頃、結局、一部の歯を失ってしまいました。もともと「くる病」だったことが関係しているのかな?と思い、インターネットで調べてみましたが、情報があまりなく、日本や海外の論文は見つかるものの、ほとんどは難しくてあまり参考にはなりませんでした。しかし、見つかった論文の中に「くる病患者さんの歯科治療」について書かれたものもあり、やはり関係があるのだと納得はできました。そこで、インターネットでもう少し調べて、現在、通院している大学病院の先生が専門で研究されていることが分かり、その病院の内分泌科を受診することにしました。

歯については、色々な歯科医院を受診しました。先生に「くる病」の論文を印刷して渡したりもしたのですが、なかなか病気について理解してもらうことは難しかったです。現在は、子どもの主治医に紹介していただいた大学病院の歯科でお世話になっています。

*むし歯などの合併症について:くる病・骨軟化症の方は、健康な方に比べて歯がもろい状態になります。このため、ひどいむし歯や歯肉膿瘍(しにくのうよう)(歯ぐきが赤く腫れたり、膿が出たりする病気)になりやすい傾向があるので注意が必要です。くる病・骨軟化症の治療を続けるほか、食後の歯磨きを必ず行う、歯科医の定期検診を受けるなど、歯のケアを怠らないよう心がけましょう。

関連ページ

point

  • 大学進学をきっかけに、治療を中断する。その後、通院していた病院がなくなってしまう。
  • 治療中断後から、しばらくして歯のトラブルが増え、最終的には20代後半で一部の歯を失う。

20代後半の頃、治療を再開

大学病院を受診して治療を再開、その後、結婚・出産する

大学病院では、以前の病院から取り寄せたレントゲン写真などのデータも持参し、様々な検査を行いました。その結果、遺伝子検査はしていないものの、「X染色体連鎖性低リン血症性骨軟化症」と診断されました。

治療は、以前と同じように薬を1日2回飲み、1か月に1回定期受診となりました。治療を再開してから、劇的に何か変わったということは無かったのですが、歯のトラブルは徐々に減ったと思います。

その後、結婚したのですが、子どものことを考えた時に、この病気が遺伝性ということもあったので、再度、インターネットで調べました。その時に、遺伝確率や、実際にお子さんを出産された方のブログを読んだり、海外の記事を読んだりしましたが、両親や親戚には同じような病気の人がいなかったので、1人で悩んでいました。

それから、無事に男児を2人出産したのですが、2人とも自分と同じ疾患であると診断されました。上の子は1歳になってすぐ、下の子は10か月の時に診断されました。出産当初から遺伝が気になっていたので、自分の主治医に相談して、同じ大学病院の小児科の先生に早い段階から診てもらっていました。やはり、歩き始める頃には少しO脚な印象があり、内股気味なので走り始めるのが遅かったり、転びやすかったりはしました。最初から息子たちを診てくれていた先生が退職するのを機に、自宅から近い病院を紹介してもらい、息子たちはその病院に転院しました。

関連ページ

point

  • 20代後半、大学病院内分泌科を受診し、治療を再開し、徐々に歯のトラブルが減る。
  • 結婚し、男児2人を出産。2人とも「くる病」と診断され、治療を開始する。

これからのこと

治療は日々進歩しているので
希望をもって治療を続けていければ

治療を再開して10年以上になりますが、とくに困ることもなく日常生活をおくれています。もともと体力は無く、握力なども弱くても、そんなに困ることなく過ごしてきたため、治療によって何が変化したかは分からないのですが、今現在は、子育てしながら、片道1時間半かけて通勤して、フルタイムで問題なく働けています。

希望としては、息子2人が未就学児とまだ幼いこともあり、頻繁に仕事を休み病院に付き添いをしているため、通院間隔がもう少し長くなると助かりますね。上の子が治療を始めて3年以上経ちましたが、多少の不安はあるものの、2人とも今のところ大きな手術の必要などもなく成長しています。私自身が歯のトラブルで大変だったため、息子たちの歯磨きは、私が寝る前にかなり丁寧に磨いています。いずれ息子たちが自分でやっていくことになるので、私のように苦労しないといいなと思っています。

同じ病気の患者さんには、治療が日々進歩しているので、正しい情報を得ながら希望をもって、一緒に治療を続けていければと思います。悩まれている方も、一人で抱え込まないで周りに相談して、治療につながっていくといいですね。

この記事の監修ドクター

伊東 伸朗 先生

伊東 伸朗先生

  • 東京大学医学部大学院医学系研究科 難治性骨疾患治療開発講座 特任准教授(研究室HP)
  • 東京大学医学部附属病院 骨粗鬆症センター 副センター長

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