Kさん(40代 女性/腫瘍性骨軟化症)

FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症と診断された患者さんの体験談です。実際の症状や経過には個人差があります。
気になる症状がある方は医師にご相談ください。また必ずしも同じ症状がFGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症と診断されるとは限りません。

Kさん(40代 女性/腫瘍性骨軟化症)

Kさん(40代 女性/腫瘍性骨軟化症)

職業:専業主婦
現在同居の家族:夫、子ども1人(娘1人)

治療により、しんどい痛みが軽減
「決してあきらめず、医療機関を受診することが大切」

診断と治療の流れ

転んで腰を強打してから歩行に違和感を覚え、整形外科クリニックを受診

周囲が気付くほど不自然な歩き方に

部屋で転び、腰を強打したときから、歩行に違和感を覚えるようになりました。そのときは整形外科クリニックを受診して検査を行い、レントゲン画像で仙腸関節の炎症が見られたことから、リハビリテーションに取り組んだのですが、症状は改善せず…。歩くたびに足首が痛くて、足をかばいながら歩くので、歩き方も周囲が気付くほどおかしくなっていきました。次第に痛みは全身に広がり、眠っていても痛い、痛いから寝返りを打ってもまた痛い、といったように、何をしても全身に痛みが走りました。日中も動くのが億劫なので、怠けているように見られ、「何で私はこんな状態になってしまったのだろう」と涙が出ることもありました。

整形外科クリニックを受診してから1~2か月経っても、症状は一向に良くなりませんでした。そこで、ほかの医療機関をインターネットなどで調べてみたところ、近所の総合病院に仙腸関節を診ている医師がいらっしゃることを知り、整形外科クリニックの医師に相談し、紹介してもらって転院することにしました。

point

  • 仙腸関節の炎症と診断され、リハビリテーションを続ける
  • 痛みは全身に広がり、日常生活も億劫で、怠けているように見られる

発症から約2か月後、総合病院ペインクリニック科へ

仙腸関節の炎症ではなく骨折していることが分かる

総合病院では、整形外科でなくペインクリニック科を受診し、痛み止めを処方してもらいました。しかし、頭痛や眠気、吐き気など副作用がひどく、薬を何度も変更しました。そのうち、副作用が比較的、軽い薬が見つかり、飲み続けるようにしたのですが、痛みがまったくなくなるわけではありませんでした。痛みを専門にしている科を受診しても改善しないのであればどうすればよいのか、そのときは途方に暮れていました。また、足をかばうような歩き方も変わりませんでした。ただ、ほかに選択肢が見つからず、この状態が一生続いていくのだろうか…と気持ちは次第に後ろ向きになっていきました。

総合病院を受診してから1年ぐらい経っても症状は改善しませんでした。歩き方が変わらないことも疑問で、あらためてレントゲンを撮ってみたところ、実は仙腸関節の炎症ではなく骨折していること、さらに折れた骨がついていないことがわかりました。ここで初めて骨の異常が疑われるようになり、骨粗しょう症専門医のいる大学病院の整形外科を紹介してもらうことになりました。

point

  • 痛み止めがなかなか合わず、何度も変更
  • 受診から1年ぐらい経って骨折が見つかり、大学病院へ

骨粗しょう症専門医による治療で痛みは軽減するもリンの数値が上がらず、内分泌内科を受診して病名が判明する

病名が分かった安堵と「なぜ自分が…」という戸惑い

骨粗しょう症専門医のいる大学病院で初めてリンの数値を測定したところ低かったので、痛みを抑える治療に追加して、リンを増やす治療を始めました。痛みは治療を始めてから、すぐにずいぶんと軽くなっていき、それに伴って気持ちも少しずつ変わっていきました。しかし、リンの数値が上がらないことに、医師は違和感を抱いていたようです。

2~3か月後には、あらためて骨軟化症の専門医のいる別の大学病院の内分泌内科を紹介してくださることになり、そこで出会ったのが現在の主治医です。さまざまな検査をした結果、線維芽細胞増殖因子23(FGF23)の数値が高く、「腫瘍性骨軟化症」であることが分かりました。症状に気付いてから2年以上経ってようやくです。主治医が「いままでつらかったでしょう」と仰ってくださり、私の気持ちを理解してくれる人が初めて現れたことをとても嬉しく思いました。その一方、病気に関する説明を受けて、ショックだったことも事実です。「病名が分かった、痛みを理解してくれる医師に出会うことができた」という安堵と、「なぜ私がこんな難病にかかってしまったのか…」という戸惑いが入り混じる、複雑な気持ちでした。

内分泌内科を専門とする主治医によって治療薬が変更されてからは、痛みが軽くなるだけでなく、リンの数値が大きく向上しました。毎回の受診時の尿検査でも腎臓の数値などに異常はなく、痛み止めの量も減ってきています。ただ、痛みが完全になくなったわけではありません。横になっていて起き上がるとき、長時間歩いたときなどは、全身が痛みます。また、出かけたり、自転車に乗ったりしてもよいと言われていますが、もし事故に遭ったら寝たきりになるリスクが高いので、特に注意するように言われています。

point

  • 骨粗しょう症専門医による治療で痛みは軽減されるも、リンの数値が上がらず、内分泌内科医を受診する
  • 症状に気付いてから2年以上経ち、内分泌内科専門医によりようやく病名が判明

これからのこと

痛みはまだ残るものの、日常生活に大きな支障がないことに感謝

完治には腫瘍を切除する必要があるとの説明を主治医から受けています。しかし、手術をするにしても痛みがなくなってから、とも言われていて、現在は数か月に1度、MRIを撮り、腫瘍の位置を特定しているところです。ただ、いまの治療で日常生活にそれほど支障がないので「このまま手術しなくてもいいかもしれない」と思いつつあるのが正直な気持ちです。

痛みが軽くなったことで、これまで心を支配していた絶望感がなくなりました。もちろん、疲れやすかったり、動くことが億劫だったりすることはまだあります。しかし、以前であれば「洗い物を片付けるのがしんどいな」「出かけたら足が痛くなるだろうな」といったように、何か行動する前に気持ちが萎えてしまっていましたが、そのような後ろ向きの気持ちもずいぶんとなくなりました。いまは普通の暮らしを送れていることに感謝しています。また、包帯を巻いたり、ギプスをつけたり、ひと目で病気と分かる状態ではないことから、つらさを周囲に理解してもらえず、孤独感を持ったこともありましたが、この病気であることが分かってから、主人や子どもがこれまで以上にサポートしてくれるようになりました。

主治医によると、身体のあちこちが骨折して寝たきりになって初めてこの病気であることに気付く人も少なくないそうです。初診時に、私が歩けていることに対してとても驚いたそうで、寝たきりの状態になる前に早めに主治医と出会えたことは良かったと思っています。私が2年以上かかったように、専門医に辿り着くことは簡単ではありませんが、決してあきらめず、医療機関にかかり続けることが大切です。私の経験が、病名が分からず同じ症状で苦しんでいる人に対し、「もしかしたら自分も骨の病気なのかもしれない」と気付くきっかけになれば、と思います。

この記事の監修ドクター

今西 康雄先生

今西 康雄先生

  • 大阪公立大学大学院医学研究科
  • 代謝内分泌病態内科学 准教授

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