くる病・骨軟化症と遺伝

くる病・骨軟化症の中には、生まれつき遺伝子が変異する(遺伝子が変化する)ために起こる疾患(遺伝性疾患)があります。

遺伝子と染色体とは

くる病・骨軟化症と遺伝

そもそも遺伝とは、親の顔や体型、性格などが子どもに受け継がれてあらわれることをいいます。この受け継がれる顔や体型、性格などに関する情報が遺伝子です。

遺伝子が数多く数珠のように連なったものを、染色体といい、細胞の核の中に存在しています。細胞の中で体のほとんどを占める体細胞には染色体が46本あり、母親と父親からそれぞれ23本ずつ受け継いでいます。

くる病・骨軟化症と遺伝 くる病・骨軟化症と遺伝

46本ある染色体のうち、男性と女性どちらの性になるか決定する2本の染色体を「性染色体」、それ以外の44本の染色体を「常染色体」といいます。性染色体は男性の場合X染色体とY染色体がそれぞれ1本ずつ、女性はX染色体2本で構成されています。

単一遺伝子疾患とその分類

遺伝性疾患のうち、一種類の遺伝子の変異によって発症するものが単一遺伝子疾患です。遺伝性のFGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症の中には、この単一遺伝子疾患に当てはまるものがいくつかあります。

単一遺伝子疾患はさらに以下のように分類されます[カッコ内がFGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症を起こす遺伝性疾患の略称と疾患名です]。

  • X染色体連鎖性遺伝(X染色体連鎖性低リン血症性くる病・骨軟化症:XLH*1)
  • 常染色体顕性遺伝(常染色体顕性低リン血症性くる病・骨軟化症:ADHR*2)
  • 常染色体潜性遺伝(常染色体潜性低リン血症性くる病・骨軟化症1:ARHR1*3)、常染色体潜性低リン血症性くる病・骨軟化症2:ARHR2、歯の異常・異所性石灰化を伴う低リン血症性疾患)

*1 XLH:X-linked Hypophosphatemic Rickets/Osteomalaciaの略称
*2 ADHR:autosomal dominant hypophosphatemic rickets/osteomalaciaの略称
*3 ARHR:autosomal recessive hypophosphatemic rickets/osteomalaciaの略称

「顕性」と「潜性」について

遺伝学の中で使われる「顕性けんせい」とは、特徴が現れやすい遺伝子のことを表しています。具体的には、1対(2本)の遺伝子のうち片方にのみ変異が入っていても、発症することです。それに対し「潜性せんせい」とは、特徴が現れにくい遺伝子、すなわち遺伝子変異が片側だけでは発症しないことを指しています。

これまで「顕性」は「優性」、「潜性」は「劣性」と表現されてきました。しかし、「優性」「劣性」いう言葉は遺伝子が優れている・劣っていると連想しがちで、誤解や偏見につながると指摘されてきました。

こうした指摘を踏まえ、日本遺伝学会は2017年に他の単語などとともに「優性」を「顕性」に、「劣性」を「潜性」に改訂するよう提案しました。本サイトでは改訂の趣旨を受け止め、「顕性」「潜性」の表記を採用しております。

FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症にかかわるそれぞれの分類について解説します。

X染色体連鎖性遺伝

親のどちらかのX染色体に遺伝子変異がある場合、その変異した遺伝子を子どもが引き継ぐことがあります。お父さんに遺伝子変異がある場合、生まれた女の子は必ず変異した遺伝子を引き継ぎますが、男の子が引き継ぐことはありません。お母さんに遺伝子変異がある場合は、生まれた男女とも50%の確率で変異した遺伝子を引き継ぎます。ただし両親ともに変異のある遺伝子がなくても、親の生殖細胞や受精後に新たに遺伝子に変異が起こる可能性はありますので、両親に遺伝子の変異がみられないからといって子どもに遺伝子変異が起こらないとは限りません。

また、女性は遺伝子変異があっても症状が軽かったり、ほとんど症状がみられなかったりすることがあります。そのため自身が変異した遺伝子の持ち主(保因者)と気づかず、お子さん(主に男児)を出産してその子に症状が出てから遺伝子検査をして初めて、保因者と気づくこともあります。FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症の中では、X染色体連鎖性低リン血症性くる病・骨軟化症(XLH)が当てはまります。

くる病・骨軟化症と遺伝

常染色体顕性遺伝

親のどちらかの常染色体に遺伝子変異がある場合、その遺伝子を引き継いだ子は男女問わず発症する疾患です。発症する確率は男女とも50%です。FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症の中では、常染色体顕性低リン血症性くる病・骨軟化症(ADHR)が当てはまります。この遺伝形式でも、両親ともに変異のある遺伝子がなくても、親の生殖細胞や受精後に新たに遺伝子に変異が起こる可能性はありますので、両親に遺伝子の変異がみられなくても発症しないとは限りません。

くる病・骨軟化症と遺伝

常染色体潜性遺伝

両親ともに同じ遺伝子に変異があるものの、変異のある遺伝子が一つのみでは病気を発症せず、変異のある遺伝子が2つそろったときに病気を発症する形式です。父親と母親の双方から変異のある遺伝子を受け継いだ子が男女問わず病気を発症します。つまり、生まれたお子さんは4人に1人の割合で発症します。

この遺伝形式では、通常片方の親にだけ遺伝子に変異があってもその子どもは病気を発症することはありませんが、前述のように該当する遺伝子に変異のない親の生殖細胞や、受精後に新たに遺伝子に変異が起こる可能性はありますので、片方の親にしか遺伝子の変異がみられなくても発症しないとは限りません。FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症の中では、3種類(ARHR1、ARHR2、歯の異常・異所性石灰化を伴う低リン血症性疾患)が、この常染色体潜性低リン血症性くる病・骨軟化症に当てはまります。

くる病・骨軟化症と遺伝

気になる症状がみられたら受診を

FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症のなかには、XLHのような遺伝性の疾患があります。祖父母や親せきの中に、よく骨が痛いと言っていた人や日常生活中に骨が折れた人がいた、もしくは、ご自身が遺伝性のFGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症と診断されていて、お子さんに気になる症状がみられた場合は、こちらで紹介している「くる病の症状」「骨軟化症の症状」を確認した上で、小児科や内分泌内科のある病院を受診してください。(「」をご活用ください)

この記事の監修ドクター

長谷川 行洋先生

長谷川 行洋先生

  • 東京都立小児総合医療センター
  • 内分泌・代謝科 部長
伊東 伸朗 先生

伊東 伸朗先生

  • 東京大学医学部附属病院(研究室HP)
  • 腎臓・内分泌内科 助教