Mさん(10代 男性/X染色体連鎖性低リン血症性くる病・骨軟化症)
FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症と診断された患者さんの体験談です。実際の症状や経過には個人差があります。
気になる症状がある方は医師にご相談ください。また必ずしも同じ症状がFGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症と診断されるとは限りません。

Mさん(10代 男性/X染色体連鎖性低リン血症性くる病・骨軟化症)
職業:学生
現在同居の家族:父、母、弟1人、妹1人
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2歳の頃、かかりつけの小児科クリニックを受診
その後、整形外科クリニックを受診
異常は見つからなかったものの、違和感を拭えず
長男が2歳になった頃、O脚で歩き方がおかしいことに気付きました。歩きも遅く、走ることもあまりできませんでしたし、とにかく頻繁に転ぶのです。本人が足の痛みなどを訴えることはなかったのですが、転んで頭を打つことがとても気になり、かかりつけの小児科クリニックを受診しました。あまりにも気になってしまうので意見を聞いてみたい、という程度で、大病を疑っていたわけではなかったですし、医師にも「このぐらいの年齢の子どもはみんな似たようなO脚で、特に異常はありません」と伝えられたこともあり、当時は病気であるなど思いもしませんでした。
しかし、もうすぐ3歳になろうという頃になってもO脚は改善せず、あらためて整形外科クリニックを受診してみましたが、異常は見つかりませんでした。ただ、歩き方がまったく改善しないことに対する違和感をどうしても拭えず、大きめの病院を紹介してもらうことにしました。
point
- かかりつけの小児科クリニックを受診、その後、整形外科クリニックを受診するも特に異常は見つからず
- 何かおかしい…と思いつつ、まさか病気であるとは思いもしていなかった
画像検査で異常が疑われて、さらに別の病院へ
情報が乏しく不安な気持ちに
大きめの病院の整形外科でレントゲンを撮ったところ、何かしらの成長障害が疑われるとのことで、さらに別の病院への紹介を受けました。成長障害とひと言で言われてもよく分からず、身体的な障害なのか、知能にも影響があるようなものなのか、とても不安な気持ちになりました。医師からはさらに別の病院を紹介され、そこで血液検査をしてみないと判断できないと言われ、自分で調べてみても手がかりすら見つからず、途方に暮れていました。
また、歯の弱さも気になっていました。2~3歳は乳歯が生え揃う頃で、乳歯が抜けてしまうにはまだ早いはずでしたが、2歳の時点ですでに乳歯が何本か抜けていました。転んで顔と口を打った際に歯の根元が傷つき、神経が死んでしまって歯が抜けてしまうのです。そして、歯茎の腫れも目立ち、歯にも何らかの異常があるのではないかと感じていました。
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point
- 「成長障害」と言われて自分なりに調べるも手がかりが見つからず
- 2歳ぐらいですでに乳歯が複数本抜けていた
総合病院小児科で確定診断
薬剤による治療を開始
紹介先の病院では当初、整形外科を受診したのですが、同じ病院内の小児科をあらためて受診することになりました。そこで初めて血液検査と遺伝子検査を受け、「低リン血症性くる病」であることが分かり、担当医師が別の大学病院の医師と相談しながら、薬剤による治療を開始しました。また、長男の後に次男と長女が生まれたのですが、2人とも「低リン血症性くる病」でした。ただ、長男の確定診断によって遺伝的疾患であることが分かっていたので、次男と長女については早期に診断がつき、0歳から治療を開始できました。
治療と並行して、情報収集に励みました。以前は病気であるなど想像もしていなかったので、思いつくままに調べていましたが、病気であると分かればインターネットで検索する際もキーワードを指定できます。例えば、身長がどれくらいまで伸びるのか、気になっていたので調べてみました。情報が少ないことは以前と同様でしたが、それでも同じ病気の方が複数人見つかり、連絡を取って症状などについて話を聞くことができました。
一方、治療の効果が見られず、嫌がる長男に薬を飲ませることも大きな負担になりつつあり、同じ病気の子どもを持つ他の親御さんはどのように薬を飲ませているのかを知りたい、といつも思っていました。そうしているうち、担当医師からこのままでは入院して無理にでも投薬しなければならないと言われて悩んでいたところ、インターネットを通じて知り合った同じ病気の方に専門医がいる病院を薦めていただき、現在の主治医がいる病院への転院を決めました。
point
- 病名が分かり、同じ病気の方と接点を持てた
- 治療方針に疑問を感じて専門医がいる病院への転院を決意
4歳の頃、専門医による治療を開始
低身長や背の伸びを診る外来を受診
転院先は小児科でしたが、骨疾患や低身長などを専門に診てくれるところでした。初診時には、これまでの経緯をまとめたものを渡し、レントゲンの撮影や血液検査をしてもらいました。同じ病気の患者さんもいたようで、「がんばって治療していきましょう」と仰ってくださいました。薬の効果が表れず、子どもに薬を飲ませることに対する負担は変わりませんでしたが、入院させて無理にでも投薬するようなことまでは仰いませんでした。最近になって、この専門医の先生に他の治療を提案していただき、今は経過が良好です。
本人の足の痛みは中学生まででなくなりましたが、それまでは走った時や遠足などでたくさん歩いた時に足が痛いと言っていたこともあり、足に負担がかからないよう、本人には体育の授業を見学するように言っていました。主治医は「できることをしたら良い」と仰ってくださっていましたが、やはり足に負担がかかるようなことは避けるべきだと思っています。本人には中学生になった頃に病気のことを伝えましたが、病気であることに感づいていたのではないかと思います。
point
- 足に負担がかかる運動はどうしても避けてしまうように
- 身長がどれくらいまで伸びるのかを心配
これからのこと
病気のことをもっと広く、
特に歯科医に知ってもらいたい
実は、私も遺伝子検査を受けてみたところ、最近になって私自身も子どもと同じ病気であることが分かりました。子どもの頃を思い出すと、確かに歩いた時に足の痛みがあり、何軒かの病院を受診したこともありました。しかし、当時はレントゲンを撮影しただけで原因は分からず、特に治療もせずにここまできています。次男と長女の症状を見て、この病気は個人差が大きいことを実感しています。O脚だったりX脚だったり、また歯の症状があったりなかったり、私と3人の子どもたちそれぞれで症状が異なるのです。子どもが今後、大きな支障もなく日常生活を送っていけるのかを心配しています。
同じ病気の方が暮らしやすくなるためにも、この病気のことが広く知られてほしいです。私の子どもの場合は主治医が見つかるまで時間がかかりましたが、どこの病院でもすぐに分かってもらえるようになることが理想です。特に、歯科医にはよく知っていてほしいと思います。数か月に1回程度のペースで通うのであれば遠距離の病院でも構いませんが、歯は定期的なメンテナンスが必要です。都心部で暮らしていないと選択肢が限られます。身近な歯科クリニックでもこの病気を考慮した治療が受けられるようになってほしいと思っています。
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この記事の監修ドクター

伊東 伸朗先生
- 東京大学医学部大学院医学系研究科 難治性骨疾患治療開発講座 特任准教授(研究室HP)
- 東京大学医学部附属病院 骨粗鬆症センター 副センター長