その痛み、骨軟化症が原因?骨軟化症の痛みの特徴

骨軟化症では、全身のさまざまな場所の骨にひびや骨折が生じて痛みが現れます。その原因は遺伝性のものや腫瘍性のもの、ビタミンD不足によるもの、薬剤性のものなど多岐にわたります。「痛み」は他の病気でも起こりうる症状であり、骨軟化症特有のものではありません。

そこで今回、骨軟化症の「痛み」に着目し、どのような場所に、どのような時に出やすいのか、また、どう痛むのか、東京大学医学部附属病院 腎臓・内分泌内科 特任講師の伊東 伸朗先生にお話を伺いました。

激しい運動をしていないのに体のあちこちがズキズキ痛む
レントゲンに写らないひびでも荷重をかけると痛むことも

Q:骨軟化症はどのような場所に痛みが出ますか?

骨軟化症で痛みの訴えが多い場所は、肋骨や太もも(太ももの骨の一番上や真ん中)、すね、足の甲などです(図1)。ただ、これらの場所のひびによる痛みは骨軟化症でなくても強い負荷が繰り返し加わると起こります。そのため、本格的なスポーツや激しいトレーニングをしているわけではないのに、この中の1ヵ所、もしくは複数箇所にひびが入ったり骨折したりなどで痛みがある場合に骨軟化症を疑います。

また、骨軟化症とは関係がないと思われている方も多いのですが、ずいという歯の中心に感染が起きて痛みが生じる歯髄炎を繰り返す場合も骨軟化症を疑います。

歯に関する症状やそのケアについては「FGF23関連低リン血症性くる病の患者さんが意識したい歯のケアについて」 をご参照ください。

図1 骨軟化症で痛みが出やすい場所

Q:骨軟化症の痛みの出かたに特徴はありますか?

痛みは左右対称に出るわけではありませんが、全身の骨がもろくなっている状態なので、いろいろな場所で同時に痛みが起こることが多いです。痛みの種類としては、鈍痛というよりも、するどくズキズキとした痛みです。

痛みのある場所が腫れるかどうかはひびや骨折の程度によります。レントゲンに写るか写らないかぐらいのひびであれば明らかな腫れは生じませんが、レントゲンにはっきりと写るような大きなひびや骨折になると炎症が起きているので腫れが生じます。

Q:どのような時に骨軟化症の痛みは強くなりますか?

ひびが大きくなると安静にしていても痛みが起こりますが、特にその部位に荷重がかかると痛みが強くなります。

足の甲やかかと、太ももやすねの骨などにひびが入っている場合は、なんとか歩けるけれど、階段を上がったり下りたり、ジャンプしたりなどは痛くてできない、といった感じです。レントゲンに写らない程度のひびであっても、痛くて歩くのがつらいと感じる患者さんもいらっしゃいます。

肋骨にひびが入っている場合は、深呼吸した時に痛みが出たり、症状がひどくなると、夜寝ている時に寝返りが打てなくなったりすることもあります。

Q:骨軟化症の痛みに対しては、どのように対処をすればよいですか?

まずは痛みが起こっている原因を突き止めることが大切です。

骨軟化症であれば、根本的な治療が必要なので、専門医にかかって診断してもらう必要があります。ひびが入った状態であれば、荷重をかければかけるほどひびが大きくなってしまうので、なるべく安静にする必要があります。

実際に医師の診断によって骨軟化症が疑われている場合には痛みを我慢して無理をしたり、運動したりするのは避けた方がよいでしょう。

骨軟化症かもしれない、と思ったら内分泌内科に相談を

Q:骨軟化症かもしれない、と思ったら何科にかかればよいですか?

骨軟化症を専門にしている医師は少ないので、大学病院などの大きな病院の内科や内分泌内科に相談することをおすすめします。診断にあたっては、血液検査でアルカリホスファターゼという酵素やリンの値を調べます。

骨軟化症は医師の中でも広く知られていない病気なので、病院を受診していても場合によっては長年診断がつかないケースも多く認められます。

相談時に医師に症状を正確に伝えるための「FGF23関連低リン血症性骨軟化症の相談シート 」をご活用ください。

Q:混同されやすい病気について教えてください。

一番混同されやすいのは骨粗鬆症です。骨粗鬆症も骨がもろくなってひびが入ったり骨折したりする病気なので混同されやすいわけですが、骨折が起こりやすい場所が骨軟化症とは異なります(図2)。

骨粗鬆症の場合は、背骨(ついたい)、太ももの骨上部の細くなっている所(だいたいこつけい)が骨折の起こりやすい場所になります。

また、神経の圧迫で歩けない状態になるせきちゅうかんきょうさくしょう、大腿骨頭に痛みが出るだいたいこっとう、体のあちこちに痛みが出るせんきんつうしょう、がんの骨転移などとも混同されやすいです。

脊柱管狭窄症であればしびれで歩けないのに対して、骨軟化症では骨のひびや骨折が原因の痛みで歩けないので痛みの種類が違いますし、線維筋痛症であれば骨軟化症と同様にその部位を押さえた時に痛みが出ますが、階段の上り下りなどで荷重をかけた時の痛みの増加はあまり強くないと思われます。

また、がんの骨転移と、骨軟化症による骨折はCTやMRIなどでその部位の画像を詳しく観察することで見分けることができます。

別の疾患と混同されたケースで、骨粗鬆症の治療の一部(骨吸収抑制薬)やリハビリによって症状が悪化してしまった患者さんもいらっしゃいます。前述したように、(図1)で示した部位に痛みがあって、荷重をかけた時にその痛みが強くなる、というのが、骨軟化症による痛みの特徴です。

この解説を読んで骨軟化症かもしれないと思ったら、なるべく早く専門の診療科を受診し、原因がはっきりするまではできるだけ安静にした方がよいでしょう。
 

※遺伝性FGF23関連低リン血症性くる病のひとつであるX連鎖性低リン血症性くる病では、成人になるとこうじゅうじんたいこっしょう(背骨の中を縦に走っている後縦靭帯が骨化して脊髄を圧迫することで、さまざまな神経症状が出る病気)を起こしやすいため、骨軟化症と同時に脊柱管狭窄症を発症しているケースもあります。

また、脊柱管狭窄症は頻度が高い疾患であるため、CTやMRIで脊柱管狭窄症が確認できたからといって、歩行障害の原因として骨軟化症がないとは言い切れません。歩行障害の原因が神経障害によるしびれなのか、こっせつ(骨を横断しない骨折)による骨痛なのかをていねいに見分ける必要があります。

図2 骨軟化症と骨粗鬆症の骨折部位の違い 図2 骨軟化症と骨粗鬆症の骨折部位の違い

伊東 伸朗先生ご提供資料を元に作成
 

<専門医からのメッセージ>

このサイトをご覧になっている方の中には、何が原因か分からずに長年痛みで悩まれている方もいらっしゃるかと思います。例えば、腫瘍性の骨軟化症は診断まで平均3年半かかったというデータがあります。別の診断名のもと、最善ではない、むしろ症状を悪化させてしまう治療が行われ、正しい診断名が付く頃にはご自身で歩けない状態になっているケースも少なくありません。

この病気は決して患者数の多い疾患ではなく、骨軟化症を詳しく診療した経験のある医師も多くないので、患者さんご自身にもこのような疾患があることを学んでいただければと思います。

繰り返しになりますが、難しいのは、足に痛みがあるから骨軟化症、というわけではなく、この病気と同じ場所に痛みが出る疾患は多岐にわたるという点です。このページで骨軟化症の痛みの特徴を把握していただき、骨軟化症かもしれないと思ったら、早めに専門の医療機関を受診していただければと思います。

※Hidaka N, et al.: J Bone Miner Res. 2022; 37(8): 1479-1488.

骨軟化症について相談できる医療機関は「相談できる医療機関を探す」から検索することができます。

この記事の監修ドクター

伊東 伸朗 先生

伊東 伸朗先生

  • 東京大学医学部附属病院(研究室HP)
  • 腎臓・内分泌内科 特任講師

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