Fさん(80代 男性/腫瘍性骨軟化症)

FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症と診断された患者さんの体験談です。実際の症状や経過には個人差があります。
気になる症状がある方は医師にご相談ください。また必ずしも同じ症状がFGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症と診断されるとは限りません。

Fさん(80代 男性/腫瘍性骨軟化症)

Fさん(80代 男性/腫瘍性骨軟化症)

職業:デイサービス施設のオーナー(発症前は専業農家)
現在同居の家族:妻

良くなると信じて
「少しでも早く、専門医に診てもらって」

診断と治療の流れ

身体のあちこちが痛くなったが、どのクリニックでも「神経痛」の診断

整形外科での治療をするも、症状は悪化の一途

身体の不調を感じるようになったのは70代後半頃のことです。その頃は専業農家をしており、妻や他の従業員とともに、広い畑で色々な野菜の生産をしていましたが、畑仕事をしていると、すぐに身体が疲れたり、痛くなるのです。それで、少し動いては休憩して、を繰り返していたのですが、だんだん休憩する時間が長くなっていき、なかなか農作業が大変になったため、廃業して本格的に療養することにしました。その時に、ご縁があって畑だったところにデイサービスの施設を作り、地域の病院へ貸すことになり、今はそのデイサービス施設のオーナーをしています。

「体調が変だなぁ」と思うようになった最初の頃は、主に膝の痛みを感じていました。そのうち、身体のあちらこちら、腰や脇、あばら、背中などの骨がだんだん痛むようになって…。近所の整形外科を中心に4件くらいに診てもらったのですが、膝については「軟骨がすり減っているから」と、他の痛みに関しては、どこへ行っても「神経痛」と言われました。糖尿病や高血圧、高尿酸血症のため内科にも通っていたのですが、そこの先生も「神経痛じゃないか」と。しばらくは、膝にヒアルロン酸製剤の注射をしたり、鎮痛剤を服用したりしていましたが、なかなか痛みがなくならず、治療の一環で理学療法の電気治療をやると、逆に痛みが酷くなることがありました。神経痛の治療を始めて2年くらいすると、身体を動かそうとするにも痛くて、寝返りや起き上がることもできなくなってきたので、このままでは悪化していくだけでダメだと思い、デイサービス施設を貸している病院の先生に相談して診てもらうことにしました。

point

  • 70代後半頃から、身体のあちらこちらが、だんだん痛くなる。
  • 近所の整形外科を中心に診てもらうものの「神経痛」との診断で、治療をするも症状は悪化の一途。

発症から2年、専門医に巡り会う

正しい診断のもと、治療が始まり安堵する

デイサービスをしている病院の先生に診てもらったら「この病気は私には正確に分からないので、大きい病院を紹介します」とおっしゃり、大規模な総合病院を紹介してくれました。そこで診てもらうと、「これは難病で間違いないと思います。専門の先生に診てもらうのがよいと思います。どちらの病院を紹介しましょうか」と先生が2つの病院を教えてくださりました。その時、息子も一緒に聞いており、少し遠いけれども車で行ける大学病院を紹介してもらうことになりました。通えるとはいっても、自宅から車で2時間程度かかり、息子に運転してもらってはいるものの、当時は体中が痛かったため、通院するだけで一苦労でした。

紹介された大学病院の内分泌内科の先生を受診して、そこで初めて「骨軟化症」という診断名を聞きました。その先生が現在の主治医なのですが、病気の説明や治療の話を聞いた時はとても安心しましたし、この病気が良くなり、痛みがなくなるのではないかと希望を持つこともできました。それまでは、どこへ行っても「神経痛」と言われ、治療しても痛みが強くなるだけで、正直、不安を感じていましたので。

そこから、この病気に対する色々な検査や治療が始まりました。検査は画像診断が中心で、レントゲンや骨シンチグラフィーなど、病気の原因である腫瘍の位置を調べることを徹底的にやりました。検査の結果、骨盤に骨軟化症の原因と考えられる良性の腫瘍が見つかり、その際、偶然にも膀胱に骨軟化症とは関係ない悪性の腫瘍も見つかったので、並行して切除する手術を行うことになりました。

point

  • 仕事で関係のある病院の先生に診てもらい、大規模な総合病院へ。そこから、専門の先生を紹介してもらう。
  • 専門の先生を受診し「骨軟化症」と診断され、検査や治療が開始される。

手術で腫瘍を切除、その後も治療を継続

手術と薬剤の治療によって徐々に痛みは改善

手術により腫瘍を切除後、低下していたリンなどの数値は少し良くなったのですが、正常範囲とはまだかけ離れているとのことでした。このままだと、今までと同じ症状のまま痛みが改善しないとのことで、薬での治療を始めることになりました。治療を始めてからは、初めのうちはなかなか検査数値は良くはならず、痛みの方も一番ひどい時よりは良くなった気はするものの、やはり痛いままでした。本当に良くなるのか不安に思いながら、先生を信じて治療を続けていくうちに徐々に良くなりました。大学病院へ行き始めた時は症状が本当にひどく、身体が痛くて普通のベッドでは1人では起き上がれず、介護用の電動ベッドをレンタルしたりしていました。とにかく、身体を曲げて何かする時には痛みを感じて、家の中では何とかなったのですが、大学病院内などの移動では車椅子を使っていましたね。

point

  • 手術で病気の原因である良性腫瘍を切除するも、リンなどの値は正常範囲外のまま、痛みも継続。
  • 手術後も治療を継続し、症状が徐々に改善。

これからのこと

病気が本当に良くなって、
主治医の先生には感謝しかありません。

家族とは、症状がひどい時の出来事を色々と話しますが、その当時のことが嘘だったのではないか、というほど今では痛みが良くなっています。今の薬に変えてから、もう1年ちょっと経つので、この前診察に行った時に「薬の治療はどのくらいまでするのですか?」と先生に聞いてみたのですが、丸2年くらいは続けた方がよいと言われました。

今の治療にとても満足しているのですが、あえて言うのなら、もっと早く今の主治医の先生に会えていたら良かったな、とは思いますね。主治医のような専門の先生が沢山いて、近所の病院でもこの病気が診断できていれば、症状が辛かった2~3年の期間がなかっただろうな、という気持ちはあります。

私と同じ病気の方は、できるだけ早く専門の先生に診てもらい、手術や薬による治療を始めることをお勧めします。私は高齢で、この病気で動けなかったせいで体力が衰えてしまい、なかなか体力が戻らないということはありますが、そんな私が痛みのない状態まで回復できているので、私より若い方なら日常生活に支障がないくらい回復できるのではないでしょうか。私自身は、この年齢で、これだけ良くなったので、主治医の先生には本当に感謝しています。

この記事の監修ドクター

今西 康雄先生

今西 康雄先生

  • 大阪公立大学大学院医学研究科
  • 代謝内分泌病態内科学 准教授

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