Gさん(50代 男性/腫瘍性骨軟化症)

FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症と診断された患者さんの体験談です。実際の症状や経過には個人差があります。
気になる症状がある方は医師にご相談ください。また必ずしも同じ症状がFGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症と診断されるとは限りません。

Gさん(50代 男性/腫瘍性骨軟化症)

Gさん(50代 男性/腫瘍性骨軟化症)

職業:事務職
現在同居の家族:妻

根治を目指して、治療を継続
「経験したことない痛みが続いていたら、検査して」

診断と治療の流れ

50歳前半の頃、腰とあばらの痛みで整形外科を受診

整形外科で治療を始めるものの、痛みはなくならず

ある日、実家の草刈りをした際に、終わってから腰やあばらが痛くなりました。あばらが痛いのは1年前くらいから時折あって、アレルギー性鼻炎でくしゃみをしすぎたせいかな、という程度にしか思っていませんでしたが、腰の方は今まで経験したことがないくらい痛かったので、整形外科へ行きました。レントゲン撮影などの検査をしてもらったら、「肋骨に骨折の跡があります」とのことでした。肋骨の骨折に関しては特に治療はしなかったのですが、腰の痛みに関してはリハビリテーションをしましょうということで、身体を伸ばしたりする治療を始めました。その時、整形外科の先生が「骨折の跡」とおっしゃったので、あばらの方は治りかかっているのかなと受け止めていました。腰の痛みに関しても、最初は年を取ったためか、草刈りの体勢が悪かったのかと考えていました。

ただ、腰の痛みがなかなか引かなかったため、当初の整形外科に通いながら、他の整形外科や整体など色々なところへ行ったりしましたが、治療のため身体を曲げられたり可動域を増やすために押されると、結局痛みが増してしまいました。

point

  • 1年くらい前から、あばら辺りが痛くなるものの、くしゃみをしすぎたからかな、と思い、病院へは行かず。
  • 草刈りをしたら、腰とあばらが痛み、複数の整形外科や整体などを受診しレントゲンを撮影するも、なかなか痛みがなくならず。

発症から約9か月後、かかりつけの内科の先生に相談

痛みが長引くため、内科で検査を受けたら腫瘍が疑われる

整形外科に行きだしてから9か月くらい経っても、あばらの辺りや腰の痛みは続いていました。持病の高血圧と高血糖で、内科に月1回通院をしていたので、そこの先生にも相談をしてみたところ、「骨折が、そんなに長くかかるのは変だね」とおっしゃり、毎月している血液検査で、項目を追加して調べて頂きました。検査結果は、アルカリホスファターゼ(ALP)の値が高く、数値的には骨折が治っていないとのことでした。その先生の見立てでは、甲状腺の腫瘍が疑われるとのことで、腫瘍の有無などの検査をするため、総合病院の内分泌内科への紹介状を頂きました。

1か月後ぐらいに総合病院を受診して、甲状腺の超音波(エコー)検査や骨シンチグラフィー検査、骨密度の検査、血液検査などをしました。結局、甲状腺には異常がなかったのですが、血液検査で線維芽細胞増殖因子23(FGF23)の値が高いことが分かりました。総合病院の先生には、より詳しく検査することを勧められ、自宅近隣にある大学病院の内分泌代謝内科に検査入院をすることになりました。

point

  • 持病の高血圧と高血糖で通っている、内科の先生に相談して、項目を追加して血液検査をしてもらう。
  • アルカリホスファターゼ(ALP)の値が高かったため、精密検査をしに総合病院へ。

より詳しく検査するため、大学病院に入院

「腫瘍性骨軟化症」が疑われるものの、腫瘍部位は特定できず

検査入院した大学病院の内分泌代謝内科では、骨シンチグラフィーや骨密度、超音波(エコー)検査、内視鏡検査などをしました。これまでの検査結果から「腫瘍性骨軟化症」が最も疑われるものの、内視鏡検査を実施しても、食道から胃や、大腸に異常はみられませんでした。そこで、ソマトスタチン受容体シンチグラフィーも実施しましたが、それでも腫瘍の位置を特定できませんでした。どうやら日本の場合カメラの精度があまり優れておらず、米粒くらいの腫瘍だと特定できないこともあるようで、より専門的にこの病気を研究されている大学病院の先生を紹介して頂きました。「腫瘍性骨軟化症」は指定難病ではありますが、まだ確定していない状況であったため申請は行わず、専門の先生に診てもらい病名が確定したら、難病申請をするよう助言も頂きました。

point

  • ソマトスタチン受容体シンチグラフィーをするため、大学病院の内分泌代謝内科へ検査入院する。
  • 検査入院の結果、「腫瘍性骨軟化症」が疑われるものの、腫瘍の位置は特定できず、専門の先生がいる大学病院を紹介される。

発症から約1年後、専門医のもと確定診断がつき手術を実施

色々な検査を実施し、手術をするも根治はできず

検査結果を持って、紹介された専門の先生がいる大学病院の腎臓・内分泌内科を受診したら、「腫瘍性骨軟化症」の確定診断がつき、その後の予定を決めました。難病申請するための書類もこの時に頂き、数日後には自分で申請しています。

初診から2か月後には、腫瘍の位置を特定し手術するために入院しました。以前、検査入院していた大学病院の内分泌代謝内科で撮った画像では足首より先が写っていなかったようで、この時に再度、ソマトスタチン受容体シンチグラフィーも実施しています。この検査をして、10日後くらいに全身静脈サンプリング検査をし、局所のFGF23の濃度より腫瘍のおよその位置を調べました。

その結果、右足側に腫瘍がありそうだということが分かり、MRIでさらに詳しく検査し、ちょうど右足の甲の辺りに原因腫瘍と疑われる影が認められました。腫瘍が小さいため、手術前に病理診断によって原因となっている腫瘍であるかを特定することは難しいとのことでしたが、私としては根治してほしかったので、「疑わしいなら取り除いてください」とお願いして、摘出手術をしました。

手術は、骨をえぐり取るような形で腫瘍を取って、そのえぐり取られた跡に、セメントのような人工骨を入れました。手術はとても簡単なもので、次の日には歩けるようになりました。ただ、残念なことに、手術で摘出した腫瘍は病理検査の結果、原因の腫瘍ではありませんでした。

関連ページ

point

  • 専門の先生がいる大学病院の腎臓・内分泌内科を受診し、「腫瘍性骨軟化症」と確定診断される。
  • 腫瘍の位置を特定し切除するため、専門の先生がいる大学病院に入院し手術をするものの根治には至らず。

手術後、薬物治療を開始

薬物治療を開始し、順調に数値が改善する

術後1週間くらいして退院したのですが、結局、原因腫瘍が見つかっていないため、退院後は薬物治療することになりました。

これまでも、鎮痛剤は服用していたのですが、血液中のリンの値を高くするための薬剤の服用も始めました。リンは、すぐに尿から身体の外に排泄されてしまうので毎食後の服用が必要となり、薬剤の量も増えて負担はありましたね。しかし、薬物治療を始めても、腰やあばらの痛みなどは改善せず、鎮痛剤の効果か多少、痛みがない時もあったのですが、日によっては痛む時もありました。先生からは「血液中のリンの量が増えても、骨が柔らかくなっているので、固まるまで半年から1年近くはかかる」というようなことを言われていたので、ある程度の期間は、鎮痛剤で痛みを紛らわして過ごすしかないのかなと考えていました。

治療を始めて半年くらいして、血液検査でリンの値が上がってきて、骨密度も一時は同年齢比で80~90%程度だったのが、119%まで上がり安堵しました。治療を始めて1年くらい経ち、腰やあばらの痛みが改善されてきたような感覚はありますが、いまだに体重がかかる足の付け根や足首のあたりはまだ痛むこともありますね。

日常生活については、とにかく運動はしてはいけないと言われていました。骨折したら身体を動かした方が良いと聞いたことがあるので、先生に「ジョギング等の運動をした方が身体にいいのですかね」と伺ったら、この病気は動かさないで安静にするのが一番の改善方法だと言われました。骨が柔らかい状態のため変形しやすいので、無理に力をかけない方がいいそうです。そのため、「腫瘍性骨軟化症」の治療を受ける前は整形外科で身体を伸ばしたり整体に行ったりしていたのですが、治療を始めてからは何もせずに、体重が増えないようにだけ気をつけていました。

point

  • 根治できなかったため、薬物治療を開始し、血液中のリンの値を高くすることを目指すことに。
  • 治療を始めてから、リンの値、骨密度ともに順調に改善し、腰やあばらの痛みも改善してくる。
  • 痛みを改善するには安静が一番と知り、運動をせず、体重が増えないように気をつける。

これからのこと

根治を目指して
今できる治療を続けていきたい

大学病院の腎臓・内分泌内科の先生には伝えているのですが、根治を希望しています。先生からは「何とか改善してきているので、現在の治療を継続していきましょう」とは言われているのですが、今の薬物治療を継続する場合、仕事に影響が出てきてしまうことがあって…。例えば、海外出張などは断らざるを得ません。仕事以外にも、どうしても色々と制限が出てきてしまうので、できる限り根治することを願っています。最低限、腫瘍の位置は特定したいですね。もちろん、腫瘍の位置が特定できても、腫瘍が摘出できるのか、摘出できたとしても、人工関節を入れないといけないのかなどの問題があるかもしれませんが。これから、より高精度の画像診断用のカメラが導入されるとも聞いていますので、ぜひ検査を受けたいと考えています。

腫瘍の位置が分かるまでは、今、できる薬物治療を継続していくしかないとは思っています。欲を言えば、もっと簡便に服薬できるようになるといいですね。幸い、自覚症状が出てから1年くらいで診断されたためか、症状は痛みが少しある程度で、日常生活にはあまり差し障りがありません。先生からは、症状が軽いうちに診断されるのは稀なケースで、何の病気か分からずに、だんだんと悪化して寝たきりになってしまう方も多くいると聞いています。

私自身もそうだったのですが、腰やあばらが痛いとか感じたら、身体を使いすぎたからとか、くしゃみをしすぎたからなど自己診断せずに、長引くようでしたら、できる範囲で色々な診療科で診察や検査を受けることをお勧めします。私は、高血圧や高血糖の持病で、たまたま内科に通っていて、そこの先生に相談したら、総合病院で検査をして大学病院へという流れで、比較的、早い段階で発見できたと思います。腰や足など、体重がかかるところの骨が痛みだすことが多いと聞いていますので、今までに身に覚えのないような痛みが長引き、筋肉痛とも違うようでしたら、検査を受けることをお勧めします。

この記事の監修ドクター

今西 康雄先生

今西 康雄先生

  • 大阪公立大学大学院医学研究科
  • 代謝内分泌病態内科学 准教授

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