Hさん(60代 女性/X染色体連鎖性低リン血症性くる病・骨軟化症)

FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症と診断された患者さんの体験談です。実際の症状や経過には個人差があります。
気になる症状がある方は医師にご相談ください。また必ずしも同じ症状がFGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症と診断されるとは限りません。

Hさん(60代 女性/X染色体連鎖性低リン血症性くる病・骨軟化症)

Hさん(60代 女性/X染色体連鎖性低リン血症性くる病・骨軟化症)

職業:店舗スタッフ(就労継続支援A型を利用)
家族構成:夫、子ども1人(娘1人*)*現在は独立

これからも、自分にできることをやっていければ

診断と治療の流れ

小学1~2年生の頃、脚の手術を受ける

手術を受け、「くる病」が完治したものと思う

私が生まれて間もない時に「くる病」と診断されていたと思います。もう、50~60年くらい前のことですから、はっきりと覚えてはいないのですが、幼少期は痛みなどの自覚症状もなかったと思います。ただ、小学1~2年生の頃に、O脚がひどかったため、手術をした記憶はあります。手術後は特に問題なく、定期的に通院することもありませんでした。運動は他の子たちのようにはできなかったのですが、それ以外は普通に過ごしていました。そのため、娘を出産するまでは「くる病」が完治したと思っていました。ただ、身長が伸びず、子どもの頃は一番の悩みでした。大人になってから知ったのですが、身長が伸びにくいのは、「くる病」の特徴だとか…。

あと、子どもの頃からむし歯が多くて、4人姉妹だったのですが、姉妹の中で私だけがすごくむし歯になりやすかったです。現在は大部分が入れ歯と差し歯で、自分の歯で神経があるのは何本かしかありません。

*むし歯などの合併症について:くる病・骨軟化症の方は、健康な方に比べて歯がもろい状態になります。このためひどいむし歯や歯肉膿瘍(しにくのうよう)(歯ぐきが赤く腫れたり、膿が出たりする病気)になりやすい傾向があるので注意が必要です。くる病・骨軟化症の治療を続けるほか、食後の歯磨きを必ず行う、歯科医の定期検診を受けるなど、歯のケアを怠らないよう心がけましょう。

関連ページ

point

  • 小学1~2年生の頃に、O脚がひどかったため、手術をする。その後「くる病」は完治したものと思い、過ごしてきた。
  • 姉妹と違いむし歯になりやすく、現在は大部分が入れ歯と差し歯となる。

29歳の頃、娘のことで受診、診断を受ける

娘の歩き方が自分の幼少期と似ていたため受診

結婚して、28歳の時に長女を出産しました。帝王切開でしたが、特に問題なく産まれました。娘が歩き始めた、ちょうど1歳ぐらいの時に、足が丸く曲がってO脚になっているのに気づき、私の母が幼少期の頃の私と娘の歩き方が似ていると言うので、「もしかしたら、娘も“くる病”かもしれない」と思い、大きな子ども病院を受診しました。

受診した際に渡された問診票に親の病歴を書くところもあったので、私自身が幼少期に「くる病」であったことを記載して提出したところ、血液検査を経て娘も「くる病」と診断されました。娘の「くる病」が私からの遺伝であると聞いた時は、正直ショックを受けました。「くる病」が遺伝するものとは全く知りませんでしたし、自分の「くる病」は幼少期に完治したと思っていましたので…。娘は就職で違う地域へ行くまで子ども病院に通い、高校生になるまでに3回ほど足の手術をしました。

関連ページ

point

  • 娘の歩き方が、自分の幼少期と似ていたため、受診。娘が「くる病」と診断を受ける。
  • 自分の病気が完治するものではなく、遺伝するものと知る。

30代後半の頃、後縦靭帯骨化症と診断

急に歩きにくくなり、近所の整形外科を受診

私が30代後半の頃、後縦靭帯骨化症と診断されました。

ある日、急に足がもつれるようになって、思うように動かないと感じるようになり、それから首を動かした時にもビリビリと神経のしびれがあったことから、近所の整形外科を受診したことがきっかけです。整形外科でレントゲンを撮った結果、すぐに大学病院を紹介されて、MRIなどの検査によって首から腰にかけて靭帯が骨化していることが分かり、後縦靭帯骨化症と診断されました。

神経の圧迫が最もひどい首のところの手術をしたのですが、術後は10日間くらい個室で寝たきり状態となりました。その後、徐々に動くようにはなり、3か月程度リハビリして、しびれなどは感じるものの、普通に歩ける程度に回復して退院しました。

退院後しばらくして、また徐々に悪化したため、2回目の手術をしました。その後、しばらくの間は何とか普通に歩けたのですが、徐々に杖がないと歩けなくなり、3回目の手術をしました。現在、何とか日常生活はできるのですが、歩く際には杖が必要ですし、足のしびれや痛みはその頃からずっと続いています。後縦靭帯骨化症と診断された当初、「くる病」とは無関係だろうとの話でしたが、数年前に、やはり関係するようだと説明を受けました。

point

  • 急に足がもつれるようになり、動かしにくくなったため近所の整形外科を受診。
  • 大学病院の整形外科を紹介され、後縦靭帯骨化症と診断される。
  • 診断された当初は、「くる病」とは無関係だろうと説明を受けていたが、最近、やはり関係するようだと説明を受ける。

40代の頃、「くる病」の治療開始

後縦靭帯骨化症だからか、なかなか痛みはなくならず

後縦靭帯骨化症の治療で大学病院の整形外科に通っていたのですが、骨もあまり強くなさそうだからと、娘が通院している子ども病院を紹介してもらい、「くる病」の治療も開始し、娘と同じように治療薬も飲むようになりました。それから治療を続けていますが、後縦靭帯骨化症だからか、しびれや痛みはずっとあります。病院は子ども病院から大学病院の内分泌内科に転院しているのですが、最近、内分泌内科の先生の勧めで治療薬を変更しました。やはり、神経圧迫からきているような、しびれや痛みが改善することはないまま過ごしています。

娘は就職で他の地域へ引っ越したため、病院も他の地域の病院へ転院しました。転院してすぐに娘も私と同じ、後縦靭帯骨化症との診断を受けたようです。一人暮らしを始める前から娘は「くる病」の治療薬をきちんと服用しておらず、一人暮らしを始めたら一時は病院も行かなくなってしまいました。なんとか説得して再度病院には行くようになったようですが、症状もなく血液検査の結果も悪くはないようなので、今は服薬を中断しており、半年に1回ないしは1年に1回の通院となっているようです。娘も私と同じように身長が伸びなかったこともあり私のようにひどくならないか心配なので、病院に付き添えたらなと思うのですが、なかなか身体の自由がきかないので…。

point

  • 後縦靭帯骨化症の治療開始後、「くる病」の治療も開始した方がよいとのことで、治療を開始。
  • 後縦靭帯骨化症の影響か、「くる病」の治療を開始しても、しびれや痛みなどは持続している。

これからのこと

こういう病気なので
自分にできることをやっていければ

後縦靭帯骨化症で、結局3回手術を繰り返し、足にはしびれや痛みもあるし、杖なしでは歩けなくなって、手も少し麻痺していて握力もないため、働けないと思っていました。そのような中、数年前、福祉サービスの一環で就労継続支援があることを知り、私でも働けると分かりました。今は支援を受けて、週4日、1日4時間程度、お店のレジ打ちなど、できる範囲で仕事をしています。また、現在、「くる病」で内分泌内科に4週に1回、後縦靭帯骨化症で整形外科に数か月に1回通院していますが、今のところ痛みはあるものの自分で車を運転して通えています。

これから望むことは、強いて言えば、40代になって初めて「くる病」への薬の治療を開始しましたが、その前から発症していた後縦靭帯骨化症による痛みがひどいため、副作用がなく痛みが改善するような治療があればよいとは思います。ただ、こういう病気だと受け入れていますので、これからも自分にできることをやっていければと思います。

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この記事の監修ドクター

伊東 伸朗 先生

伊東 伸朗先生

  • 東京大学医学部大学院医学系研究科 難治性骨疾患治療開発講座 特任准教授(研究室HP)
  • 東京大学医学部附属病院 骨粗鬆症センター 副センター長

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