「骨折しやすい」「何度も骨折してしまう」…その原因はFGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症かも

骨折が起こりやすい部位(骨粗しょう症)
骨折が起こりやすい部位(くる病・骨軟化症)

「骨折しやすい」「何度も骨折してしまう」「骨折がなかなか治らない」…。このような悩みを抱えてはいませんか?また、骨折したシチュエーションが、事故や転倒でなく、日常生活の動作によるものだった方はいませんか?

実は、特定の疾患が原因で、骨が通常よりも柔らかくなり、繰り返す骨折につながることがあります。そうした疾患の一つに「低リン血症性くる病・骨軟化症*1」があり、その中に「FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症*2」が含まれます。

*1子どもで発症した場合(医学的には成長軟骨帯閉鎖以前に発症したもの)を「くる病」、成長軟骨帯閉鎖後に発症したケースを骨軟化症と呼びます。
*2FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症は「ビタミンD抵抗性くる病・骨軟化症」、「ビタミンD抵抗性骨軟化症」、「原発性低リン血症性くる病」と呼称される場合もあります。

「くる病・骨軟化症」とは?なぜ骨折しやすくなるの?

骨はカルシウムやリンといったミネラル成分などによって構成されていて、常に古い骨から新しい骨へと作り替えられる新陳代謝が行われています。この新陳代謝の過程で、血液中のミネラル成分を材料に骨の石灰化(骨が硬くて丈夫になること)が行われます。石灰化にはビタミンDも必要で、ビタミンDは腸でのカルシウムやリンの吸収を増やし、血中のミネラル成分の濃度を調節しています。

この石灰化が何らかの原因で妨げられると、類骨(石灰化していない骨)の割合が増加し、骨は通常と比較して柔らかくなり、小児期では骨が弓の様に湾曲して痛みを伴うこともあります。これがくる病です。

柔らかい骨は、いわゆる“弱い”状態です。そのため骨折が起きやすくなり、偽骨折ぎこっせつ(骨を横断しない骨折)もみられることがあります。このような小児期~成人期を通して認める骨の石灰化障害を骨軟化症と言います。

くる病・骨軟化症とは

骨粗しょう症との違いは?

骨粗しょう症との違い

骨折しやすい疾患として、「骨粗しょう症」を思い浮かべる方もいるでしょう。
骨粗しょう症は、骨の新陳代謝のバランスが何らかの原因で崩れてしまい、古くなった骨を溶かす働きが新しい骨を作る働きを上回ってしまうために起こります。
骨粗しょう症の場合、骨の量は減りますが、石灰化した骨と類骨との割合は変化しません。一方、くる病・骨軟化症では骨の量自体に変化はなく、石灰化した骨と類骨の割合が異なるのです。

成人で発症した骨軟化症では、ほとんどのケースで発症当初は骨粗しょう症や関節リウマチ、脊柱管狭窄症など他の疾患と誤診されています1)

くる病・骨軟化症の原因は?FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症とは?

くる病・骨軟化症は、骨の石灰化に必要なリンが、体内で不足し石灰化がうまくできないために起こります。リンが体内で不足する原因とその病名は、大きく以下の3つに分けられます。

  • ビタミンD欠乏性くる病・骨軟化症:ビタミンDの摂取不足や日光浴の時間が短い場合などで起こる
  • ビタミンD依存性くる病・骨軟化症:体内のビタミンDが遺伝的な原因でうまく働かない
  • その他の低リン血症性くる病・骨軟化症:遺伝的に、もしくは生まれたあとの要因により主に腎臓でのリンの排泄が増えることで血中のリンの濃度が低下する

※詳しくはくる病・骨軟化症の3つの原因と疾患をご覧ください。

3の「低リン血症性くる病・骨軟化症」のひとつに「FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症」があります。ホルモンのひとつであるFGF23(線維芽細胞増殖因子23、fibroblast growth factor 23)は骨で作られて血中に分泌され、「血中のリンを低下させる」よう働いて、血中のリンを一定の範囲の濃度に調節しています。

FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症は、FGF23が過剰に作用して血中のリンの濃度が異常に低くなり、骨の石灰化が妨げられるために起こります。

FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症の症状

FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症は「骨折・偽骨折」以外にも、様々な症状があります。

例)

  • 骨や関節の痛み(押すと強い痛みがある、怪我をした覚えがないのに痛みが長いている)
  • 筋肉の痛み、筋力の低下
  • 関節のこわばり
  • 変形性関節症
  • かかとや脊柱(背骨)のしびれ・痛み
    (かかとの靱帯じんたいけん(筋肉と骨を結びつける組織)、脊柱の靭帯などが異所(本来の部分とは異なる場所)性に骨化することがあり、異所性骨化が起きると神経が圧迫されることがあるため)
  • O脚(内反膝)やX脚(外反膝)といった足の変形
  • 歯肉膿瘍しにくのうよう(歯ぐきが赤く腫れたり膿がたまったりする)やひどいむし歯
  • 難聴

診断で重要な「血液検査」

血液検査

骨折はくる病・骨軟化症だけでなく、骨粗しょう症などの他の疾患やスポーツ外傷・スポーツ障害でも起こりえるため、診断には血液検査が重要です。

FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症の患者さんは、血中のリンの値が低くなるなどの特徴があります。血中のリンの値、そしてアルカリホスフォターゼという酵素の値は、近隣の医療機関で調べることができます。

受診する際にはFGF23関連低リン血症性・骨軟化症の相談シートをぜひご活用ください。

くる病・骨軟化症と間違われやすい疾患、似た疾患
くる病・骨軟化症の診断

遺伝でFGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症を発症することも

FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症には、生まれつき特定の遺伝子に変異があるために起こる先天性と、生まれた後に発症する後天性の2タイプがあります。

先天性でよくみられるのは「X染色体連鎖性低リン血症性くる病・骨軟化症(XLH*3)」という疾患で、PHEX(phosphate-regulating gene with homologies to endopeptidases on the X chromosome)という遺伝子の変異が原因で発症する疾患です。後天性では「腫瘍性骨軟化症(TIO*4)」という、腫瘍(異常な細胞が増殖してできたかたまり)がFGF23を過剰に分泌することで発症する疾患などがあります。

詳しくは「FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症とは?」をご覧ください。

*3XLH: X-linked hypophosphatemic rickets/osteomalaciaの略称
*4tumor-induced osteomalaciaの略称

先天性のFGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症の場合、約半数では家族に同様の疾患の方がおられませんが、約半数では親から変異のある遺伝子を引き継いで発症します。例えば、XLHは「単一遺伝子疾患(一つの遺伝子変異によって発症する)」の「X染色体連鎖性遺伝(X染色体に遺伝子変異がある場合、その変異した遺伝子を子どもが引き継ぐこと)」に当てはまり、以下のような特徴があります。

  • お父さんに遺伝子変異があると、生まれた女の子は必ず変異した遺伝子を引き継ぐ。男の子は引き継がない。
  • お母さんに遺伝子変異があると、生まれた男女とも50%の確率で変異した遺伝子を引き継ぐ。

X染色体連鎖性遺伝の家系

親族のなかに「骨折を繰り返す」「骨折しやすい」「程度の強いO脚やX脚がある」などご自身と似た症状で悩まれている方、もしくはFGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症と診断されて治療している方がいる場合には、診断のきっかけになりますので確認してみるのも良いでしょう。

FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症の治療

FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症は、基本的には経口薬や注射薬による治療を生涯続けていきます。TIOの患者さんは、原因となる腫瘍が特定できて完全に切除することができれば完治となり、腫瘍が完全に切除できない、腫瘍が特定できない、切除できない箇所にあるなどの場合は、経口薬や注射薬による治療を行います。
どの治療法を選択するかは、ご自身のライフスタイルなどを考慮しながら、医師とよく相談して決めていきましょう。

くる病・骨軟化症の治療方法

1)Juan Feng,et al.Endocr J.2017 Jul 28;64(7):675-683.

この記事の監修ドクター

伊東 伸朗 先生

伊東 伸朗先生

  • 東京大学医学部附属病院(研究室HP)
  • 腎臓・内分泌内科 助教