足の甲が痛い…その原因はFGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症かも

骨の痛みを伴う「くる病・骨軟化症」とは?

足の甲に痛みを感じる、特に階段を降りるときに痛んだ経験はありませんか?
足の甲が痛むときは、スポーツによって起こる疲労骨折や靱帯じんたいけんの損傷などが原因だと思うかもしれません。しかし、なかにはスポーツ障害やスポーツ外傷ではなく、疾患が原因の場合もあります。
階段を降りるときに足の甲が痛む方で、こんな症状にも悩まされてはいませんか?

  • 寝返りを打ったときに肋骨周辺が痛む
  • 歩いているときに股関節が痛くなる
  • 筋力の低下
  • よく骨折する・骨折がなかなか治らない
  • 骨や筋肉が痛む
  • 痛みが長く続いている
  • 病院を受診した際、激しい運動などをしていないのに疲労骨折(単純X線検査で撮影した際、Looser’s zoneと呼ばれる線が写る)がみられると医師から説明された

これらの症状が当てはまる場合、「FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症*1,2」という疾患の可能性があります。

*1子どもで発症した場合(医学的には成長軟骨帯閉鎖以前に発症したもの)を「くる病」、成長軟骨帯閉鎖後に発症したケースを骨軟化症と呼びます。
*2FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症は「ビタミンD抵抗性くる病・骨軟化症」、「ビタミンD抵抗性骨軟化症」、「原発性低リン血症性くる病」と呼称される場合もあります。

骨の痛みを伴う「くる病・骨軟化症」とは?その原因は?

骨の痛みを伴う「くる病・骨軟化症」とは?

くる病・骨軟化症とは、何らかの原因で骨の石灰化(硬くて丈夫になること)がうまくいかなくなり、石灰化していない骨(類骨)の割合が増え、通常よりも骨が柔らかい状態になる疾患です。くる病・骨軟化症の患者さんの骨は変形しやすく、痛みを伴うことがあります。

骨は、常に古くなった骨から新しい骨へと作り替えられていて、その過程で骨の石灰化が行われます。石灰化には、骨の材料となるリンやカルシウムだけでなく、腸でのカルシウムやリンの吸収を増やし、血液中のカルシウムやリンの濃度を調節する働きがあるビタミンDなどが必要となります。

くる病・骨軟化症とは

くる病・骨軟化症の主な原因は、体内でのリン不足による骨の石灰化障害です。体内でリン不足が起こる原因は、大きく3つに分類することができます。

  • ビタミンDの摂取不足などで体内のビタミンDが足りないために起こる「ビタミンD欠乏性くる病・骨軟化症」
  • 体内のビタミンDは足りていても、遺伝的な原因でうまく機能しないために起こる「ビタミンD依存性くる病・骨軟化症」
  • 遺伝的に、もしくは生まれた後の何らかの要因により、主に腎臓でのリンの排泄が増加し血液のリン濃度が低下するために起こる「その他の低リン血症性くる病・骨軟化症」

※詳しくはくる病・骨軟化症の3つの原因と疾患をご覧ください。

FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症とは?

「FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症」は「その他の低リン血症性くる病・骨軟化症」に含まれます。
血中のリンの濃度は、腸や腎臓などの働きによって一定の範囲になるよう調節されています。調節する因子の一つに、骨で作られ血中に分泌されるホルモンの一種「線維芽細胞増殖因子23(fibroblast growth factor 23: FGF23)」があります。FGF23には「血中のリンを低下させる」働きがありますが、このホルモンが過剰に作用してしまうと、血中のリンの濃度が異常に低くなり、骨の石灰化障害が起こります。

FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症は、先天性*3(生まれつき特定の遺伝子に変異があるために起こるタイプ)と、後天性(生まれた後に発症するタイプ)とに分けられます。

先天性のタイプは、PHEX(phosphate-regulating gene with homologies to endopeptidases on the X chromosome)という遺伝子の変異が原因で発症する「X染色体連鎖性低リン血症性くる病・骨軟化症(XLH*4)などがあり、後天性は腫瘍(異常な細胞が増殖してできたかたまり)がFGF23を過剰に分泌することで発症する「腫瘍性骨軟化症(TIO*5)」などがあります。

ちなみに、XLHは子どもの頃から症状がみられることが大半ですが、大人になってから疾患が見つかることもあります。TIOは大人で発症することが多いです。FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症は様々な症状があり、子どもの患者さんと大人の患者さんともにみられる症状や、それぞれに現れる症状があります。詳しくは「FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症とは?」をご覧ください。

*3先天性の中には、親から遺伝するものとそうでないものもあります。
*4XLH: X-linked hypophosphatemic rickets/osteomalaciaの略称
*5tumor-induced osteomalaciaの略称

診断で重要なのは?

骨の痛みを伴う「くる病・骨軟化症」とは?

この疾患は必要な治療を受けないままでいると、骨や筋肉の痛みが強まったり、骨折を繰り返す傾向があります。症状が悪化すると日常生活の動作に支障をきたし、車いすを利用しなければならなくなったり、寝たきりになることもあるため、早期治療・早期診断は重要です。

しかし、偽骨折や腱・靱帯の損傷などで足の甲が痛む場合があるように、「痛み」という症状だけでは、他の疾患、特に整形外科領域の疾患との鑑別(疾患を絞り込むこと)は容易ではありません。そこで欠かせないのが、血液検査です。FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症では血中のリンの値が低くなるなどの特徴があります。なかなか痛みが治まらなかったり、痛みが他の部位にまで現れるなどしていた場合には、近隣の医療機関を受診して、血中のリンに加え、アルカリホスフォターゼという酵素の値を調べてもらいましょう。受診する際にはFGF23関連低リン血症性・骨軟化症の相談シートをぜひご活用ください。

くる病・骨軟化症と間違われやすい疾患、似た疾患
くる病・骨軟化症の診断

FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症の治療

FGF23関連低リン血症性くる病・骨軟化症には治療法があり、疾患のタイプによって治療法が少し異なります。例えばTIOと診断された場合には、FGF23を過剰に分泌する腫瘍の切除をまず目指します。腫瘍を完全に取り除くことができれば完治となりますが、腫瘍が取り切れない、もしくは切除が難しい場所に腫瘍がある場合などは、経口薬や注射薬による治療を行います。経口薬や注射薬による治療は根本的に病気を治すものではないため、生涯にわたって治療を継続していく必要があります。実際に治療する段階になったときは、治療法について医師とよく相談して、続けていくことができるようにしていきましょう。

くる病・骨軟化症の治療方法

この記事の監修ドクター

伊東 伸朗 先生

伊東 伸朗先生

  • 東京大学医学部附属病院(研究室HP)
  • 腎臓・内分泌内科 助教